今週の担当 light
待ち合わせ場所に着くと彼はすでにきていた。私は面食らった。私は彼をみた瞬間、急に体が熱くなった気がした。なかなか彼のもとに行けず1人で焦っていると彼と目があった。
「あれ、はるなそんなところで何してるんだよ。」
彼は笑いながらこっちに来た。
「え、な、何もしてないよ。」
私は言い訳が見つからなかった。彼はハハッと笑っていた。
「ねえ、あそこに座らない?」
「あ、あそこ懐かしいな。春菜と初めて会った場所だ。具合が悪くないのに、心配して声かけてくれたな。」
そう言いながらベンチに座った。
しばらく、沈黙の時間が続いた。葉の擦れ合う音だけが聞こえていた。私にはずっと聞きたかったことがある。あの時のこと。電話では聞けなかった。私は勇気を振り絞って口を開いた。
「この前、なんで来れなかったの。返信もしてくれなかった。ずっと待ってたのに。」
私は少し怒った口調になってしまった。彼は空を見ていた。
「俺さ、5歳の時この公園でよく遊んでたんだ。友達いなくて一人で遊んでた。寂しいなんて思わなかった。だから、一人でも何も思わなかった。でも、ある時遊具の下に座り込んで泣いてる女の子を見つけた。最初は気にも留めなかったよ。だけど、ずっと泣いてるもんだからさ、無視するのも嫌だなって思って声をかけた。その子はなかなか泣きやまなかった。俺はひたすら泣き止まそうと頑張った。そうしたら、その子はいつの間にか笑顔になってた。たくさん話してその子のことを知った。それからその子とはよく遊ぶようになった。だけど、いつからか遊ぶことがなくなった。毎日公園にいったけど、会えることはなかった。」
彼は悲しそうな顔をしていた。私は唖然とした。私は今までのことを思い返した。彼の名前に愛着が湧いたことも、最初から彼が気になことも。
「その子の名前って・・・」
「春菜。北村春菜。君だよ。俺は春菜と初めて会ってから1日も欠かさずにここに来た。いつかは会えるだろうって。でも春菜が来ることはなかった。俺は春菜と会うこを諦めかけていた。そんな時に、春菜が目の前に現れたんだ。すぐにわかったよ。」
なんて言ったら良いのかわからなかった。あの時の男の子が彼だなんて。でも、私は違和感を覚えた。あの時の男の子と颯真の名前が違う。
「名前が違う。男の子の名前は颯太だった。颯真じゃない。」
彼は少し困ったような表情をしていた。もしかして、顔が曇っていたことと何か関係があるのかも。
「ごめん。名前は嘘をついていた。本当は颯太なんだ。」
「どうして嘘をついたの。」
私は嘘をつかれたことに悲しくなった。
「俺、病気を持ってるんだ。余命3ヶ月。この前遊べなっかたことも病気のせいなんだ。本当なら入院は5月だったんだけど、急に容体が悪化して入院しないといけなくなったんだ。本当は今も入院しとかないといけないんだけど、どうしても春菜に会いたっかたし、謝りたかった。嘘をついたのは、春菜に俺のことを思い出してほしくなかった。思い出されると、死ぬのが嫌になるだろ。だから、何も知らないままでいて欲しかった。」
私は涙が出ていた。嘘をつかれたことが嫌なのではない。颯太に会えたことと、颯太に余命があることに対しての涙だ。颯太は涙を拭ってくれた。その優しさに、また泣き出してしまいそうだった。
「何も知らなかった。颯太だったなんて。気づけなくてごめん。私が公園に行けなくなったのはね、転校したからなの。何も言わずにいなくなってごめん。」
颯太は泣きながら私を抱きしめてくれた。
「なんで最後に会いに来るんだよ。もっと前から来てよ。会いたっかた。ずっと。俺は13年間春菜のことが好きだった。最後にこんなこと言ってごめん。」
私は颯太を強く抱きしめ返した。
「なんで今言うの。もっと早く会いたかった。私もずっと好きだった。」
私たちはしばらくの間抱きしめあっていた。日が暮れる頃には、泣き止んでいた。
それから数週間後、颯太は亡くなった。看護師さんによると、あの日、颯太の容体はひどく悪く、病院の関係者の人たちは、外出を反対したらしい。だけだ、どうしてもと言うものだから仕方なく許可を出したのだそうだ。私は涙が止まらなかった。
お葬式があった夜。スマホが光った。スマホを見ると一件の通知。名前を見ると
「颯太」
私は驚いてスマホを落とした。何度見ても颯太と書いてあった。内容を見ると、
「幸せになれよ。」
と書いてあった。次に瞬きをした時にはそのメッセージは消えていた。私は泣くのではなく微笑んでいた。空を見上げると、たくさんの星が輝いていた。
使った語句:面食らう、違和感、愛着、唖然